夏の私は消耗品



遠くの町に住んでいる人と電話で話した。

「完全に結晶化された相手ならひとりいる」
――どんな人?
「中学から好きで、告白して振られて、就職して再会してちょっと付き合って別れた」
――なんで別れたの?
「魔が差した、としか言いようがない」
――後悔してる?
「してるさ!」
――魔がさしたってどういうこと?
「彼女はぼくに薬の役割を求めていたんだ。ぼくは分かっていた。だから彼女のお薬として振舞った。それで、とっても上手くいったの。でも、とっても上手くいったら、薬をなくさないと、彼女は健康になれない、、、と思ったんだな」
――へー。
「これは、たとえ話として聞いてくださいね?
散歩によく行ったんだよ。どこの道を通ってどこの角を曲がるか、というのは大体ぼくが決めるんだけどね。
歩いていて建物を見てぼくが足をとめて、彼女に、
この建物はね...なんて解説をする。
すると彼女はその建物を見ないんだよ。
説明するぼくをうれしそうにずっと見てるんだよ」
――うん。
「それが、とっても...イヤになったの」